「ずさんな東海第二の避難計画」(先崎千尋)

ずさんな東海第二の避難計画

先﨑千尋(元瓜連町長)

 

 2月13日夜中の地震にはたまげた。飛び起きてテレビをつけた。東海村は我が家から至近距離。そこにある日本原電東海第二発電所がどうなのかが心配だったから。何事もないことを確認し、また寝た。翌朝のテレビはもっぱらこの地震の模様を伝えていた。福島にある2か所の原発には異常がなかったようだが、高速道路で土砂が崩れたり、東北新幹線が不通になったりし、けが人もかなり出た。大学受験にも影響が出ているようだ。報道では、今回の地震は10年前の東日本大震災の余震だとか。今回は津波が起きなかったので一安心だったが、福島の人たちはさぞ肝を冷やしたのではないかと思っている。10年も経っているのに、余震だとは驚きだ。

 その東海村。「毎日新聞」は全国版の1月31日と2月1日付で「東海第二避難所1.8万人不足」「責任曖昧 ずさん算定」という記事を載せている。それによると、同発電所をめぐる広域避難計画で、県内の避難所が2018年時点で約18,000人分不足していた。施設のトイレや倉庫、ステージ、玄関ロビーまで避難者の居住スペースとして計算していたからだという。県の基準は「避難者1人当たり2平方メートル」だそうだ。トイレや倉庫まで含めて算出しているので、実際にはもっと少なくなる。あまりにもひどすぎる計画だ。畳1枚よりほんの少し広いくらいのスペースに、台風などの水害とは違い、いつまで続くかわからない長期間の避難生活ができるのか。計画を立てた人や首長、議員の皆さんに実験してもらいたいものだ。

 原発事故に備えた広域避難計画は原発から30㌔圏内の自治体が策定することになっている。茨城県では東海村など14の市町村が該当し、これまでに5市町が策定済みだそうだ。その計画の中身を承知していないが、コロナ騒ぎの前のものなので、現時点では役に立たないだろうと考えている。県が昨年5月に示した自然災害の際の避難所レイアウトでは、1人5平方メートルを想定している。原発災害にこの基準を当てはめると、広域避難計画そのものが成り立たなくなる。

4年前の県知事選のとき、現職の橋本昌氏が「避難計画などできはしない」と言っていたことを思い出す。県のトップがそう発言しているのだから、私も計画は作れないと思っている。策定済みのところも作り直さなければならないのではないか。計画策定は原発再稼働の前提となっているので、東海第二原発の再稼働はできないことになる。

 

 「毎日」の記事には、災害リスク学が専門の広瀬弘忠さんの「あまりにもずさん。本気度が感じられない。『事故は起きない』という楽観が暗黙の前提になっているのではないか」というコメントが載っている。今度のような最大震度6強の地震がまた発生し、津波も押し寄せたら、10年前と同じような惨事になる。いいかげんな避難計画を策定し犠牲者が出たら誰が責任を取るのだろうか。「東日本大震災、今も影響。余震警戒さらに10年」と専門家は呼び掛けている。今度の地震はいろいろなことを考えるきっかけを作ってくれた。